僕は誰だろう

​​​​目覚めた自分の体には毛布が巻きつけられていた。次に視界に入ったのは、目の前の焚き火の炎だった。​​そして焚き火をまたいだ反対側には老人が居眠りをしている。
自分がなぜここにいるのかわからない。
目の前の老人は誰だろう?  
いや、それよりも・・・
・・「自分は誰なんだろう?」
「記憶がなくなってる」という自覚はある。だけど何も思い出せない。
「一体自分は何者で、今自分に何が起きているんだろう?」
真上を見上げるとたくさんの星達が宝石のように瞬いていた。
しばらくすると目の前で寝ていた老人が目を覚ました。
寝起きにも関わらず、急に老人は自分に向かって饒舌に話をし始めた。
「珍しいな、ほとんどのやつは自分が誰だか気にもとめず生きてるってのに。お前さんは自分が何者か知りたいってわけかい」
「はい、知りたいです」
「知るというのは少し違うんだがな、思い出すといった方が正しいのかもしれない。人間ってやつは目に見えるものに振り回され過ぎだからな。そして過去にとらわれ過ぎる」
老人は話を続けた。
「人生を謳歌する為に必要なことは二つ。
(自分を知ること)と(他人を知ること)だ。特に自分が何者であるかを知ることは最も重要だ」
「ほとんどの人間が(自分自身)をよく知らずに死んでゆく。自分の勝手な思い込みによって自ら制限をかけ、内なる心の声を無視して本当になりたい自分を諦める。可能性が無限であることに気付いていない」
「君はどんな人生を生きてゆきたいのか、そこをじっくり考える必要があるぞ」
老人の最後の一言が胸に刺さった。
自分にとって老人の言葉はかなり重要なことだと感じた。
老人からほんの少し目を逸らした次の瞬間、老人はもうそこにはいなかった。
今のは幻だったのだろうか?
すると今度は自分の頭の中に急に映像が浮かび上がってきた。

川で溺れて流されてる人がいる。
誰かが気付いて川に飛び込んだ。
さっき話をしてた老人だった。
溺れてた人を抱え岸に運びながら何か喋っている。
「君、あそこにテントがあるのが見えるか?あの中に毛布があるからそれで寒さをしのぐんだぞ!!」
溺れてた人を岸まで運んだ老人は、激流に飲まれ流されていった。
遠ざかる老人の姿が見えなくなった今、少しずつ失われた記憶が蘇りつつあった。

カーターの短編物語

ぼーとしてる時に思い浮かんだ物語を集めてみました。 夢 愛 希望 未来 自由

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