全てを捨てた男
彼の人生における最優先事項は「魂の充実感」である。
だが、この事に彼が気付くまでには時間がかかった。
自分の心と向き合い、自分と対話する時間を持たなかった20代。
可能性に蓋をして、目の前の仕事と生活だけに追われていた30代。
彼は今月で40歳を迎える。
大半の人が、変わりたいと願いながら変われない人生を生きている。
実際、彼もそのことは今までの人生を振り返って重々承知済みだ。
以前彼は、どこかでこんなことを聞いた。
「人生を変えるには3つの方法がある。
●住処を変える●付き合う人を変える●時間の使い方を変える」
40歳の誕生日の一週間前に、人生を変えるべく彼は行動を起こした。
長年勤めあげた会社を辞めた。そして、大切な家族や友人関係を全て断ち切って家を飛び出した。国も捨てた。楽しかった思い出や悲しかった記憶も全部捨てた。自分の名前や血液型も捨てた。得意だったこと、能力、自信、苦手だったこと、劣等感、体験したあらゆる経験値を全て捨てた。
全てを捨てた彼に残ったものは「魂を充実させたい」という気持ちだけであった。
空虚な世界に身を置いた彼は、ノートとペンを取り出した。最初のページにタイトルを書き込んだ。「制限の無い世界」
そして彼はこう考えた。「もし制限が無いのなら、これからの人生で僕はどんな夢を叶えたいんだろうか?」
これから自分に起きてほしいことや、なりたい自分像をとことんノートに殴り書きした。
あらゆる想像力を使いながら・・・・。
10年後、彼は50歳になろうとしていた。
有名なベストセラー作家になっていた彼は、お洒落なマイホームで家族と幸せに暮らし、自由な時間もたくさん確保出来ていた。
「魂の充実感」を存分に満たしながら、好きなこと、夢中なれることに没頭して毎日を過ごしていた。
彼はふと思った。「10年前と同じように、今の自分をもう一度全て捨て去ってしまおうかな・・・」
彼がノートに書き込みをする時は、過去の自分や今の自分を全て捨てたつもりになって未来を描いた。このノートのメリットはリスクもコストもかからないところだ。
会社を急に辞めなくてもいいし、すぐに住む家を変える必要もない。わざわざ良好な人間関係を切らなくてもいい。ノートとペンさえあれば、誰でも自由に空想の旅へ飛び立つことができた。
そう、全てを捨てた男とは「全てを捨てたつもりになって、望んだ未来を手に入れた男の物語」である。
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